何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


『最近城の前に、変なしゃべり方をした男が座り込んでいるようで…。この前なんか、天使教様に会わせろなんて無礼な事を言い出しまして…。』

そんな兵士からの報告が、京司の元に上がってきていた。
しかし、彼は別に危害を及ぼしているわけではないので、もちろん捕らえられる事などはない。

「変なしゃべり方の奴なんて、アイツぐらいか…。」

京司は、それがりんの事だという事にすぐ感づいた。
その報告からして、恐らくりんは何かを京司に伝えたいのだろう。
しかし、気にはなるものの、最近は見張りの目が多くて、あまり外には出られずにいた。
どうしたものかと思案しながら、京司は城の中をウロウロしていたその時。

「あら、こんな所でどうしたの?天師教様?」

今日も無表情の彼女は、わざとらしくその嫌な名前で京司を呼んだ。

「お前、本当に神出鬼没だな…。」
「失礼ね。」

どこでも突然現れるかずさに慣れ始めた京司は、驚きもせずに、呆れ顔を見せていた。
口ではそんな事を言った京司だったが、これは絶好のチャンス。

「このメモ、りんに渡してくれ。」

スッ

かずさに小声で耳打ちをし、手に紙の切れ端を握らせた。
彼女の事は100パーセント信頼しているわけではなく、むしろ疑わしい事ばかりだ。
しかし、りんの事を知っている彼女にしか頼めない。そう思って京司は、とっさにそれを彼女に託した。

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