何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「あの二人…どうなると思う?」

かずさが、面白そうに口端を少しあげた。

(この女は全て知っている…。)

そして、辰も確信した。

「…もう会ってはいけない…。」

辰は、きっぱりとそう言いきった。

「それは、天音が天師教を倒す運命だから?」
「…。」

辰は口を堅く結んだまま、微動だにしない。

「あなたの役目は…?」

(そうかこの女は…。)

「まあ、言わなくても、わかってる…か…。」

そう言って、かずさは後ろを振り返り、その場から去ろうとマントをひるがえした。

「待て!」

すると、すかさず辰が、かずさを呼び止めた。

「…。」
「お前は…。」
「賭ける?」

かずさが、辰に背を向けたまま、唐突にその言葉を吐いた。


「え…?」
「次に天音が会うのは、天師教と京司どっちだと思う?」


辰のしかめっ面を月光の心もとない明かりが照らしている。
しかし、その表情はかずさには見えてはいない。



「…賭けはしない…。」



すると辰は、少しだけ振り返ったかずさの目を真っすぐ見て、小さくつぶやいた。



「…。」
「私が、あんたに勝てるはずがないだろう。」



(ああ。この男は…知っていたのか…。)



「————預言者殿…。」






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