激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
「じゃああとで」
社長の横で、機械のように不自然な会釈をして車を見送った。
でも内心では、叫びたい衝動が沸き上がってくる。
わざわざ最後の文字を滲ませるとか、なんなの。慣れてるの? 遊び人なの?
「なるほどね。彼がこの仕事が終わるまでは誰にも内緒にしたいらしいね」
「え」
「君のためだろう。大丈夫。結婚式が遅れても私が上手く皆に説明してあげるからね」
社長にご機嫌にウインクまでされてしまった。
違うのに。社長はこの仕事が終わるまで私たちが結婚式を遅らせると、彼に上手く説明されたのかな。
そこまで彼は用意周到なんだ。
この字が滲んだ名刺だって、私を騙すための小道具なんじゃないの。
「悪い話ではないんだから、そう緊張しないで」