激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
電話しなきゃ、と名刺を取り出していると、高そうな車が目の前で突然止まった。
「石井くん、これって」
「あー、今朝の高級外国車っすね」
目を輝かせている石井くんの横で、私は心がざわざわとした。胸がざわついていた。
これって――。
スローモーションのように運転席が開く。
高級そうな革靴と共に、香る匂い。
身体がしびれてしまいそうな、全身の心臓の音を奪われてしまいそうな、爽やかなのに魅力的な匂い。香水だけじゃないその彼の匂いに、身体が熱くなっていた。
「……迎えに来た」
「え、ええ?」
「約束していただろ」
一方的に、ですよね。そう言いたいけれど、彼の目が隣の石井くんに向けられる。
「悪いが、俺の方が先約だ。いいか?」
「い、いいっす。もちろんです、俺は駅まで道が一緒のただの後輩です!」
存在感だけで圧倒されたのか、早口でそういうとさっさと駅の方へ歩き出してしまった。
頼りにならない。今は石井くんか藁に縋りたいのに。
「ゆっくり話がしたい」
「仕事の延長として、なら」
釘を刺す。簡単に、高級な車に釣られた女みたいにほいほい乗り込むのが癪だから、だ。
「俺は一ミリも仕事の話はするつもりはない」
「じゃあ、お断――」
「再会したんだから、会えなかった時間を埋めようか」
彼の言葉が、私の心を掴んで強引に向き合おうと近づいてくる。
触れられたら、逃げられない。捕まえられたら、吸い寄せられる。
「思い出すかもしれないし?」
「……思い出すって」
「初めましてじゃないって言ったはずだ。乗って。駐禁とられる」