激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

そう思うのに、彼の指先から香る、彼の匂いに狂わされていく。

「俺の髪に触れば、思い出すかな。俺は宝石のように大事に触れたつもりだ」

 思い出す――。
 私と彼の、過去の接点?
 恐る恐る手を伸ばす。自分から男の人に触れるのは、初めてだった。
 指先からピリピリした電撃が私の全身に駆け巡る。
 彼のその髪の触り心地は知っていた。
 忘れられるはずもない。けれど、知っているのは、ハワイでの数日だけ。


 食事をしようと連れて行かれたお店は、どこか懐かしい。
 メニューを見て驚いた。あのハワイのホテルの中にあったステーキハウスと同じメニュー。
 ここはハワイにもお店を出す有名店らしい。

 目の前に移動式の鉄板が運び込まれ、ステーキを焼いてくれた。
目の前に料理人がいるので、深い話はできなくてすむ。

「お酒は?」
「いいです。一度、貴方に醜態を見せてるので」

 首を振って、無難に水を頼むと苦笑された。
 運転する彼ももちろん、ノンアルコールビールだった。
 ステーキが妬き終り、お皿に盛られると料理人は鉄板ごと居なくなる。
 私と彼の目の前には、ネオン輝くビル美しい夜景が広がっている。
「私、人を見る目がないと思うので、今は自分のスキルアップが必要と思ってます」
 美味しそうなステーキを前に、辛気臭くて笑ってしまう。
< 63 / 168 >

この作品をシェア

pagetop