激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
彼のお姉さんの件は、確かに覚えている。
けど、その日は親戚の結婚式に参加していた。バイトも止めて就職していたから、出席者として結婚式場に居た、はず。
スタッフに久しぶりに挨拶したらバタバタしていて、ふんわりと事情を聞いた。
かなり御不幸な出来事だったから、多分その日のことだと分かったけれど、あの日に彼に出会った記憶はない。
「君は、泣いているみどりに元気づけてくれたんだ」
みどり?
それはこの前、私がいるにも関わらず電話で話していた相手。
「えっとみどりさんとは」
ステーキを一口食べたが、こんなにも美味しいのに味が分からなくなりそうだ。
「死別した達樹さんと姉の一人娘で、あの時は十歳だったかな。飲み物で汚れた俺のネクタイを奪って、汚れを落とそうと必死でさ。母親が汚したネクタイに罪悪感があったらしい」
「え、ああっ」
泣いている女の子にネクタイの汚れの落とし方を教えたかもしれない。
それはちょうど、ハワイで彼がネクタイをおしぼりで汚れを拭こうとしていた時と状況が似ているかもしれない。
そこで泣いている女の子に、引き出物の焼き菓子とロビーでジュースも貰ってきて、ハンカチを渡した気がする。
ハンカチを返しますって言われたから、結婚式場のスタッフだったから式場に渡してねって伝えた。
それで急いで帰りのバスに乗ることになって、笑顔になった少女が誰か男性に抱き着いて、一緒に手を振ってくれていた。
でも私は急いでバスに乗り込んでいたので、彼女の目線までしか見ていなかった。