白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

「これ、食べない? 買ってきた」

 そして、差し出されたのは。

「カヌレ……?」

 紙袋に入ったカヌレだった。
 これ確か、新しくできたブーランジェリーで、行列に並ばないとダメなところのだ。雑誌で見たことある。

「おいしいって評判だそうだ」
「おいしそう!」

 思わず言うと琥白さんは嬉しそうに目を細める。
 コーヒー淹れますね、と私が言うと、琥白さんは頷いた。

 コーヒーを二つ持ってテーブルに座ろうと思ったら、ソファに誘導される。
 私は、ソファの前のローテーブルにコーヒーを置くと、自分の持って帰ってきたプリンも見せた。

「これもいただいて。甘いの重なっちゃいましたけど食べます?」
「食べるけど、……いただいたって誰から?」

 琥白さんは聞き、私は事の次第を話す。
 すると琥白さんは呆れたように息を吐いた。

「知らない人にお菓子もらうとかだめだろ」
「でも、危ない感じじゃなかったんだけどな」
「どんな奴だ」
「普通の……人のよさそうな営業マンって感じの男性でしたよ?」

「ふうん」

 琥白さんはそう言うと、眉を寄せた。

(まさかヤキモチ……ではないよね?)
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