白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

「プリン、ありがとうございました。おいしくいただきました」
「そんなこと気にしなくていいのに」
「今日は、お休みですか……?」
「仕事の帰りです。あ、僕は、仕事でも私服の方が多いんですよ。あの時はスーツでしたけど」

 そう言って笑う顔が、やっぱり兄に似ていると思った。
 私は鞄を探ると、もし会えた時にと用意していた封筒を手渡す。

「これ、お渡ししたくて。プリンのお金」
「こんなのいいのに」
「そういうわけにはいきません」
「うーん」

 少し考えた後、その人はにこりと笑い、「わかりました。受け取ります」と言った。
 その言葉にほっとする。

「よかった」
「でも、これじゃ多いので、一杯だけコーヒーをごちそうさせてください」
「えぇ! そんなのいいですよ!」

 私が慌てると、男性は私の後ろの路上販売のワゴン車を指さし、

「そこのコーヒー、安くておいしいんです。それに外なので、男といても安心でしょう?」

と微笑む。

「いえ、別にあなたを警戒しているわけでは……」
「なら行きましょう」

 そう言われて、多少強引だったけど、私はなぜかその人のあとについていっていた。
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