白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
「……え? やっぱり親戚ですかね?」
「たしかに昌宗さんに、雰囲気似てたけど」
と愛華さんは言うと、慌てて、ごめん、と呟く。愛華さんは兄が失踪したままだと思っているから当然の反応かもしれない。
もしかしたら仕事の関係かもしれないわ、と愛華さんは言って、それに私は頷いた。
この近くに勤めているそうだし、確かにそうかもしれない。
それから、愛華さんは私を見ると、申し訳なさそうに頭を下げた。
「この前はごめんね……」
「大丈夫ですよ」
愛華さんは大きく息を吐くと、私の顔を見る。
「きっと天橋社長から聞いてないと思うけど……うちの会社ね、ちょっと危なくて。私、実は政略結婚するんだ。それも10も年上のオジさん」ときっぱりと言う。
そして続けた。「前からなんとなくそんな話はあってね。最近正式に決まった」
「そう、だったんですか……」
(だからこの前、様子が変だったんだ……)
愛華さんはぎゅうと、自分の手を握りしめた。
「でも、最初くらい好きな人としたいわよ。それに相手が琥白だったら、そのまま私がもし婚約破棄して琥白と結婚ってことになっても、周りも文句もないと思ったの。だからふたばが結婚に前向きじゃないこと知って、あんな提案した」
「最初って……愛華さん、まだ誰ともしてなかったんですか!」
「わ、悪い?」
『私が琥白を誘惑するわ』なんて言うから、てっきりそう言うことに慣れているのかと思っていた。
愛華さんが恥ずかしそうに私を睨む。
その仕草がやけに可愛いと思った。
「いえ……私もなので」
私が小さく言うと、愛華さんは目を細めて笑い、それからゆっくり口を開く。
「琥白は全部知ってた。騙せなかったし、少しも振り向いてくれなかった……」