白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
私は震える自分の手をじっと見た。
「私、本当にお兄ちゃんに会ったんです」
「わかってます。ふたばさんの話しぶりもそうだったし、実際ふたばさんには見えていたはずですから」
工藤さんは優しく言う。
そんなのありえないって頭ごなしに言われると思った私は思わず顔を上げた。すると優しい目をした工藤さんと目が合う。
「ふたばさんが見えてるものは本物なんです」
でも、工藤さんも、琥白さんもお兄ちゃんは死んだって言ってたはずだ。
私は息をのむと、
「……じゃ、工藤さんは、幽霊、って思ってるってことですか?」
と聞く。すると、工藤さんは首を横に振った。
「ふたばさんの中の昌宗っていえばいいのかな。人は死んでも、心の中に思い出が残るって言うでしょ? それがふたばさんの場合は鮮明に見えてるんだと思います。もちろん、幽霊の可能性も全否定はできませんけど……話した内容によるかな」
「内容?」
「ふたばさん。今日会ったとき、昌宗はあなたに何を言いました?」
「……え?」
「あの時、ふたばさんに、昌宗は何を言ったの?」
工藤さんが真剣にそう聞くものだから、私は真剣に思い出して答えた。
「『琥白といたらまた裏切られる。もう傷つく必要ない』って」
「……そうか」
工藤さんは頷くと、「ふたばさんは、琥白といることに不安がある?」を聞いてきた。