白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

「昌宗は3年前、失踪したあと、秘密でふたばと……それから俺に連絡を取ってた」

 琥白さんが言う。
 私はそれが信じられなくて、驚いて琥白さんを見た。

「嘘」
「本当。俺には、無事を知らせるって言うんじゃなくて、事業を立ち上げるための相談だった」
「……え?」

 そんなことも、初めて聞いた。
 お兄ちゃんはあっちで、また仕事をしようと思ってたの?

 私は、兄は、もうそういう世界から遠ざかりたいと思っているとばかり思いこんでいた。
 僕は経営者に向かないんだよね、って何度も言っていたし。

「昌宗めちゃくちゃやる気だったぞ。お前に黙って、会社軌道に乗せて、妹にかっこいい所見せたいって張り切ってた。それでふたばに天橋不動産やめさせて、パリに呼ぶって言ってた。そんな奴が自分から死ぬかよ!」

 琥白さんはそう言うと、私の目を見る。
 その目は、嘘なんてついていない目だった。

「……そう、なの?」
「あぁ、それは絶対にそうだ。間違いない。保証する。俺は直接パリで話したし、昌宗もそうなる日をずっと楽しみにしてた。そんなあいつをふたばが信じてなかったなんて……そっちに驚いたわ」

 琥白さんはそう言うと、不器用な兄と勘違いが過ぎる妹はこれだから、とつぶやいて息を吐く。
 そしてまっすぐ私を見ると、

「あれは本当に不運な事故だったんだ」

 そうはっきり告げた。
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