白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 それからパリの街を回って、パリに住んでいたときお気に入りだったトロカデロ広場近くのカフェに入る。
 そこからエッフェル塔が見え、琥白さんは、ここいいな、と目を細める。

 店の前の路地に沿ったテラス席に座ると、街路樹の香りが鼻をかすめた。

「……いい香り」
「そうだな」
「何度も来てたのに……初めて気付いたかもしれません」

 これまでこの景色も全部好きだった。何回もここを訪れた。
 でも、この香りがこんなに芳しいものだと気づくことはなかった。

 いい香り、と私が微笑むと、琥白さんも嬉しそうに微笑む。

「これからもふたばの好きな場所、もっと教えて。一緒に見に行きたい」
「はい」

 それから私はまたパリの街並みを見て、目を細めた。

「琥白さん、私ね……琥白さんに自分の好きなもの、見せたかった。だからそんな風に言ってもらえて嬉しい」

 私が言うと、琥白さんは嬉しそうに笑う。
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