白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
私はコーヒーを飲み、カップを置くと、目の前に座る琥白さんをまっすぐ見つめた。
「前にここに来た時は、全部嘘ばっかりで……」
「そうだったな」
琥白さんは何を思い出したのか、苦笑する。
私は周りも、お兄ちゃんも、私自身すら信じられていなかった。
裏切られるのが怖くて、本音を出さず、自分の心を守ることだけに必死だったのかもしれない。
「でも今は……お兄ちゃんだけでなくて、琥白さんにも本音で話せるようになって、前と……見える景色も、感じる音も、匂いも、全部違うんです」
琥白さんは頷いて、それから「やっぱり、いつまでも昌宗には勝てないみたいだな」と言いながら嬉しそうに目を細めた。
「それはもちろんそうですよ」
たとえこの世からいなくなっても、私にとってお兄ちゃんはずっと、いつまでも、かけがえのない人だ。