白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
俺は腕の中で寝息を立てるふたばの髪をそっと撫でる。
彼女の身体中に大量に散るシルシは自分がつけたもので、それを見て、秘書の神尾に言われた『琥白さんは恋愛となると粘着質そうですよね』という言葉を思い出す。
あながち間違ってはいないし、否定できない。
だからこそ、こうやって、今、彼女は自分の腕の中にいるのだ。
「諦めないで良かった……ふたばがここにいて……」
夜の間、彼女の声に、反応に、香りに、愛情があふれて止められなくなって……こんな風に相手を貪欲に求める自分をはじめて感じて戸惑った。
抱き合ったらもしかしたら何かが変わるだろうかと思っていたけど、抱き合ってからさらに彼女に嵌った気がする。
この『愛情』という感情こそ底がないものだと……そんなことを思って目を瞑ると、昌宗が事故に遭う半月前。
ーーーパリで会った日のことを夢に見た。