白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

「……琥白さん、私にGPSでもつけてます?」
「いえ、野暮用で来みてたらあなたを見かけて。こんなところでどうされたんです?」

 そうだ、ここは、愛華さんの藍沢グループ本社ビル前。

(愛華さんと話してたの、見られていたわけじゃなさそうだけど……)

 私は、言い訳が思いつかず黙り込む。
 そんな私を知ってか知らずか、琥白さんは微笑むと口を開いた。

「お帰りになるなら一緒に帰りましょう」
「社に戻って少し仕事があります」
「じゃあ一緒に行きますよ」
「なんで……?」

 思わず眉を寄せると、琥白さんは心底楽しそうに笑った。

「あなたの職場を一度見てみたいと思っていたんです」
「……社外の人間を勝手に入れるわけにはいきません」
「では、社長に許可をいただきましょうか。すぐに許可いただけると思いますが」
「ひきょっ……!」

 卑怯、と言いかけて、口を噤む。
 琥白さんを見ると、何が楽しいのかいつもよりさらに機嫌良さそうにニコニコ笑っていた。

「いいです! わかりました! 行きましょう!」

 なんでこの人といるといつも負けた気になるんだろう……。
 考えてみれば昔からこうだったような……。
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