一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 別に許した覚えはないが、どうも彼の中ではそういうことになっているようだ。

 私が拒んでも、迷う心を攫うように甘い口づけで溶かそうとする。

「観光までもう少しゆっくりしてもいいだろう。やっとふたりきりになれたんだ」

 深冬は私が拒み切れないのを知っていて、優しく、しかし強引に迫るのかもしれない。

 いつか私がこの瞬間に溺れて彼を受け入れてしまうまで、逃がしてもらえない気がした。



 予定を大幅に遅らせて清水寺と二寧坂を観光した後は、ライトアップされた石畳を通ってたちばなに戻った。

 夕飯を食べるために通された〝牡丹の間〟には既に見知った智秋さん一家と、初老の男女の姿がある。

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