一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 怖がっていないで彼との未来を信じればよかった。

 半年の契約結婚なんて馬鹿な提案をしなければよかった。

 あなたにもっと好きだと伝えればよかった。

 かろうじて動いた手で反射的に顔を覆ったその時、私の身体をよく知るぬくもりが包み込んだ。

「ぐっ……!」

 小さな声も耳に馴染んだ音だった。

 息ができなくなるほどきつく抱き締められたまま顔を上げると、勝手に溢れ出した涙が頬をこぼれる。

「深冬!」

 私を襲った女性に負けず劣らずの甲高い悲鳴が空気を裂いた。

「深冬、深冬……!」

 膝をついた深冬は私を離してくれない。

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