一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 ばたばたと周囲で聞こえる複数の足音も、女性が取り押さえられる様子も今は頭に入ってこなかった。

「どうして私なんか庇ったの!」

 声を震わせて問うと、腕を押さえた深冬が脂汗を滲ませながら笑った。

「馬鹿だな」

 かすれた声が近付き、私の唇に触れる。

「俺がお前をどれだけ愛しているか、知っているくせに」



 幸い、深冬の怪我は命にかかわるものではなかった。

 腕を十針縫うことにはなったが、安静にしていれば一か月ほどで傷が塞がるという。

 彼はそんな状態の中でも女性の件について対応し、手術を終えても休まず社長としての業務を優先した。

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