一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
『杏香はちゃんとやれてます? うちの子ったら昔から本当にだめで。家事もうまくないし、かわいげもないし――』

「杏香はかわいいですよ」

 ちょっと、と咄嗟に深冬の腕を引っ張るが、彼はスマホを離さずさらに続ける。

「私にはもったいないぐらい素敵な女性ですから。コンシェルジュとしても非常に優秀ですし、公私ともに私にとってなくてはならない人です」

 深冬は私の手を押しのける代わりに自身の手で包み込んだ。

「杏香ほど完璧な人はいません」

 迷いのない言葉は私の目頭を熱くさせる。

 だから深冬は怒っていたのだ。母が私を否定するところを、ついに自分の耳で聞いたから。

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