一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 もし呼吸の必要がなかったら、この人は一瞬も唇を離さずに口内を甘やかし続けたのではないだろうか。

 思わずどきりとした私の手を捉えた深冬は、手のひらを重ねてからシーツに繋ぎ止めた。

「悪いな、余裕がなくて」

「ううん。……やっと、だもんね」

 私たちが最後に愛し合ったのは十年前。多くのものが変わった中で変わらないのはお互いの気持ちだけだろうと思っていた。

 でも、情欲を秘めながらも切なげに見つめる彼の瞳がその考えを否定する。

 深冬も私も相手に向ける気持ちは変わっている。

< 246 / 261 >

この作品をシェア

pagetop