一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「あなた以外と付き合ったことないって知ってるくせに……」

 十年間、私の心にはいつも深冬がいた。

 ベッドに置き去りにした最低の男だと恨み、悲しむ気持ちが半分。胸が張り裂けそうなほどの愛おしさが半分。

 恋をしようと思えなかったのは、本当にひとりぼっちの朝を迎えたトラウマのせいだったのだろうか? いつまでも忘れられない人が心にいたせいで、誰にも特別な感情を抱けなかったからでは?

「そっちだっていつそんな……どきどきするようなことを覚えたの」

「俺はお前しかいらない」

 質問の答えとしては噛み合っていない気がするが、それが深冬のすべてだ。

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