エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「〝お兄さん〟を紹介してほしい、と言われて」


私はためらいがちに、たどたどしく答えた。


「え?」

「よかったら、連絡ください、って……」


一瞬険しくなった彼の瞳から逃げ、歯切れ悪く告げる。
純平さんも、名刺の意味に合点したようだ。


「無闇に個人情報を垂れ流すもんじゃない。返してきてくれ」


クッと眉根を寄せ、名刺を床にひらりと落とす。
チェアをギッと軋ませて凭れかかる彼に、私はパチパチと瞬きを繰り返した。


「……あ」


ハッと我に返って、足元に落ちた名刺を拾い、背筋を伸ばす。


「なにか不満でも?」

「ふ、不満なんか」


斜めに見上げてくる彼の前で、わずかに逡巡して……。


「……興味、ないんですか」


無意識に、ポツリと呟く。
純平さんが、「は?」と眉をひそめた。


「桃子は、私と違って美人です。大人っぽいし」


目を合わせられずに彷徨わせ、意味もなく服の裾を掴んで引っ張る。


「ああ。確かにな」


軽い調子の相槌に、グッと詰まったものの……。


「その桃子が、純平さんに好意を寄せてるのに?」

「…………」

「わ、私を〝妹〟と思ってるから、断ることもできなくて、それで……」

「俺には結婚前提の彼女がいる、とでも言っておけ」
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