エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「ごめんなさい。諦めます……」


がっかりして、しゅんとした。
泣きそうになって歪む顔を見られたくないけど、彼が手を離してくれないから、隠すこともできない。


「じゅ、純平さん」


私は、彼の手首に手をかけた。


「もう、言いません。だから、離し……」


目を逸らして言う途中で、


「っ……」


純平さんが、いきなりキスをしてきた。
驚く間もなく、ぬるりと入ってきた舌が、私の口内を蹂躙する。


「ふあっ……」


意志とは関係なく、鼻から抜けるような声が漏れる。
ガクッと膝が折れそうになった時、ゆっくりと唇が離れていった。


「泣くな」


額の先で、そういう形に動く濡れた唇を、私はボーッと目で追う。


「じゅん……」

「俺の前で泣くのは、逆効果だ。むしろ、とことん虐めてやりたくなるだけだからな」

「……はっ!?」


とろんとして、麻痺しかけていた思考回路が、一気に正常運転に切り替わった。


「警察のくせに、なんて恐ろしいことを口走るんですかっ」


憤慨して頬を膨らませる私に、彼はくっくっと含み笑いを漏らし、ようやく顎から手を離してくれた。
私は反射的に一歩飛び退き、警戒心を露わに、涙目で彼を睨みつけた。
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