エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「でも、ふたりでお出かけだし。純平さんに恥を掻かせないように、できる限りおめかししますね」


ぎこちなくへらっと笑って見上げると、彼はなにか逡巡するように顎を摩って……。


「まあ、コンビニと本屋じゃ、二時間もあれば用は済むか」


ポツリと独り言ちるのを耳にして、私はその続きを待って首を傾げた。


「せっかく一日休みにするのに、もったいない。……お前、それ以外に行きたいところあるか?」

「え……」


予想外の質問に、大きく目を瞠った。


「コンビニ以外に? え、それじゃあ、本当にデート!?」


問われたことを頭の中で噛み砕き、がっかりが一転、私は声を上擦らせた。


「勘違いするな。デートなんかじゃ……」

「私、東京で行きたい所、たくさんあるんです! 水族館に博物館に、スカイツリー。それから……」


異動が決まってから、ガイドブックを眺めて思いを馳せた幾つもの観光スポットが、走馬灯のように脳裏をよぎる。


「あ、中華街に、あの有名な夢のテーマパークとかも……!」

「断る。GWにあんな人の多いところ、疲れに行くだけだろう」


呆れ果てた顔をしていた彼が、盛り上がる私をビシッと寸断する。


「えー……」
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