エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
***


今年のGWは、暦通りに勤務する者にとっては、大型連休とはならなかった。
俺は後半の中日に休暇を取り、朝から歩と連れ立ってエントランスに降りた。


ロビーを並んで歩く俺たちに気付いたコンシェルジュが、「おはようございます」と声をかけてきた。
会釈で返す俺の隣で、歩が「おはようございます!」と明るく挨拶をする。


「おふたり揃っておられるの、初めて見ました。今日はご夫婦でお出かけですか」

「はい。純……しゅ、主人が、お休みを取ってくれたので」


わざわざ足を止めて、コンシェルジュと会話を始めた。


「瀬名さん、お忙しい方ですしね。新婚さんだし、嬉しいでしょう。瀬名さんも、奥様と楽しんできてくださいね」


最後は、どこか好奇に満ちた目を俺に向けてくる。
この間の住人といい……俺たちの偽装結婚は、マンション内で着々と広まっている。
そう言い出したのは俺だが、彼女とふたり揃っているところで声をかけられると、新婚夫婦とは人前でどう振る舞うものかと考えてしまい、うまく装えない。


結局俺は、半ば彼女の背を押すようにして促し、マンションを出た。
歩は、買い物の時と同じく、車で出かけると思っていたのだろう。
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