エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
新海さんが理路整然と説明してくれても、混乱のあまり、頭が朦朧としてきた。


「大島はバイヤーの中でも末端だが、東京駅で旅客に紛れて取引を行うという情報を得て、我々が張り込んでいた。そこに接触してきたのが、あなたというわけだ。菅野さん」


わざわざと言った感じで名を呼ばれて、私はぼんやりと田込さんを見上げた。


「あの女性……大島さんは、捕まったんですか……?」


無意識に訊ねると、不快そうに眉をひそめられる。


「この状況で、他人の心配か。バカがつくお人好しだな」


呆れ顔で蔑まれ、呆然と視線を彷徨わせた。


「さあ、もう理解しただろう。鑑定、始めさせてもらおう」


田込さんに、新海さんも無言で頷く。
この交番の制服警官を呼んで、鑑定の準備を始める。
ガクガクと足が震えて、私はその場にペタンと座り込んだ。


どうして、こんな目に。
乗り換え方法を教えてもらおうと、偶然話しかけた女性だ。
新生活を始める私への激励、嬉しかったのに――。


「っ……」


混乱と悲しみ、そしてやるせない思いが胸に溢れ、声が喉に詰まった。


「ふ、うう……」


込み上げてきた涙を堪えようとして、くぐもった声が漏れる。


「泣いても無駄です。さあ、立ってください」


新海さんが無慈悲に言い捨て、私の肘をグイと掴んだ。
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