エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
その時。
「なんだ? バイヤーに接触したS常習者……と報告を受けたんだが」
部屋の戸口の方から、初めて聞く低いトーンの声がした。
「あっ。瀬名さんっ……!」
新海さんが、即座に反応した。
それまでにも増してキビキビとした口調には、どこか緊張感が滲んでいる。
私は涙が浮かんだ目をそろそろと上げ、新海さんの向こうに、凍えそうに冷たいオーラを放つ、やけに綺麗な男性を見つけた。
「それにしては随分と丸腰だが……それか?」
『それか?』で、私を顎先で示し、革靴の踵をカツカツと鳴らして、歩み寄ってくる。
私の目の前まで来て、胡散臭いほど優雅に片膝をつき、
「お前、本当に大島から買ったのか?」
指先で私の顎をクイと持ち上げて訊ねてきた。
すぐ額の先で、男性のさらりとした黒い前髪が揺れた。
スッと一筆で書いたような整った眉。
涼し気な切れ長の目。
強烈な目力を湛えた黒い瞳が、無理矢理目を合わせられた私を、真正面から射貫いてくる。
彼の質問はあまりに言葉足らずだったけど、もう今となっては、私がなにを疑われているか、重々承知している。
私はひくっと喉の奥を鳴らしてから、勢いよく首を横に振った。
「ち、ちが……私っ……」
身の潔白を訴えようと気が急いて、カラカラに渇いた喉に声が引っかかる。
「なんだ? バイヤーに接触したS常習者……と報告を受けたんだが」
部屋の戸口の方から、初めて聞く低いトーンの声がした。
「あっ。瀬名さんっ……!」
新海さんが、即座に反応した。
それまでにも増してキビキビとした口調には、どこか緊張感が滲んでいる。
私は涙が浮かんだ目をそろそろと上げ、新海さんの向こうに、凍えそうに冷たいオーラを放つ、やけに綺麗な男性を見つけた。
「それにしては随分と丸腰だが……それか?」
『それか?』で、私を顎先で示し、革靴の踵をカツカツと鳴らして、歩み寄ってくる。
私の目の前まで来て、胡散臭いほど優雅に片膝をつき、
「お前、本当に大島から買ったのか?」
指先で私の顎をクイと持ち上げて訊ねてきた。
すぐ額の先で、男性のさらりとした黒い前髪が揺れた。
スッと一筆で書いたような整った眉。
涼し気な切れ長の目。
強烈な目力を湛えた黒い瞳が、無理矢理目を合わせられた私を、真正面から射貫いてくる。
彼の質問はあまりに言葉足らずだったけど、もう今となっては、私がなにを疑われているか、重々承知している。
私はひくっと喉の奥を鳴らしてから、勢いよく首を横に振った。
「ち、ちが……私っ……」
身の潔白を訴えようと気が急いて、カラカラに渇いた喉に声が引っかかる。