エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「天気よくて、よかったですね。最高のデート日和です」


〝デート〟と思い込んで、声を弾ませる彼女には、軽い相槌を返す。


「まず水族館に行って、お昼は館内で食べたいです。ショッピングモールが近いみたいなので、その後行ってみませんか?」

「ああ。いいんじゃないか」

「歩き疲れたら、カフェで休憩して。帰りに本屋とコンビニ回っていいですか?」

「ああ」


通りを行き交う通行人に意識を働かせ、彼女の提案は上の空だった。


「純平さんは? どこか行きたい所ありますか? 私、お供しますっ」

「ああ」

「……純平さん?」

「ああ……」


――とりあえず、今のところ、こちらを窺っている不審人物は見つからない。
微かに吐息を漏らしたものの、今日一日、警戒を解いていられる状況にあっては意味がない。
ついつい難しい顔をしてから、ふと隣を見ると。


「ん?」


歩がいなかった。


「……おい?」


ハッとして足を止め、振り返る。
彼女は俺の数歩後ろで立ち尽くし、俯いていた。


「なにやってる。早く来……」

「純平さん、いくらなんでも、気がなさすぎ……」


呼びかけを遮られ、俺は口を噤んだ。
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