エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
揚げ足を取って揶揄することで、俺は冷静を取り戻そうとした。
歩が、「う~ん」と悩まし気に唸る。


「それはそうですけど、そういう言い方がしっくりくるんです。認められて、求められてるみたいで嬉しい」

「ああ」


彼女のぬるぬるした説明の途中で、俺は合点して声を挟んだ。


「だからお前は、俺に抱かれる時、あれほどまでに悦ぶのか」

「……えっ!?」


彼女が、ギョッと目を剥く。


「あ、朝っぱらから、なんてこと言うんですかっ、純平さん!」

「最初に口走ったのはお前の方だろうが」


慌てふためいて声をひっくり返らせ、俺以上に動揺する様を目にしたおかげで、冷静と余裕を取り戻すことに成功した。
そうすると、手を繋いだままでいるのが気恥ずかしくて、俺はパッと手を離した。
彼女の温もりが残った自分の手を持て余し、乱暴にスラックスのポケットに突っ込む。
歩は、俺が突然手を解いたことに戸惑った様子で、その場にピタッと立ち止まった。


「ついて来ないなら、置いていく」


俺は先に歩きながら、肩越しにチラリと目を遣った。
彼女は自分の手と俺に、交互に視線を向けていたけれど。


「…………」


なにか言いたそうな顔をしながらも、黙って俺の後からついてきた。
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