エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
歩はこの〝デート〟に、俺は渋々付き合っていると言ったが、実際のところ、そういうわけでもない。
館内の水槽を鑑賞して回るうちに、どこか開き直ったように、いつもの調子ではしゃぎ出した彼女は、呆れ半分ながら見ていて面白かった。
午前中にアシカショーを観て、次のイルカショーの前に昼食をと、フードコートに入った。
なににしようかと、幾つものブースを物色していた時、俺のスマホに着信があった。
「ん?」
スラックスのポケットから取り出したのは、仕事用のスマホだ。
モニターを見た俺が、眉間に皺を刻むのに気付いたのか、
「あ。お仕事、ですか?」
歩が、気遣うように訊ねてきた。
「ああ……」
俺は、辺りにサッと視線を走らせた。
ここなら、ほんの少し、彼女をひとりにしても心配ないと判断する。
「出てくる。お前と同じもの、買っておいてくれ」
返事は待たずに、人気の少ない場所に移動して、着信に応じた。
「瀬名だ」
無意識に声を潜めながら、ラーメンのカウンターに並ぶ彼女を目で追う。
『瀬名さん、朝峰です。休暇中に、すみません』
予想通りの相手に、見えないとわかっていて何度か頷く。
「構わん。なんだ」
『構わん、ですか。今日は、ペットのお散歩では?』
冷やかすような返事が耳に届き、ピクッと眉尻を上げる。
館内の水槽を鑑賞して回るうちに、どこか開き直ったように、いつもの調子ではしゃぎ出した彼女は、呆れ半分ながら見ていて面白かった。
午前中にアシカショーを観て、次のイルカショーの前に昼食をと、フードコートに入った。
なににしようかと、幾つものブースを物色していた時、俺のスマホに着信があった。
「ん?」
スラックスのポケットから取り出したのは、仕事用のスマホだ。
モニターを見た俺が、眉間に皺を刻むのに気付いたのか、
「あ。お仕事、ですか?」
歩が、気遣うように訊ねてきた。
「ああ……」
俺は、辺りにサッと視線を走らせた。
ここなら、ほんの少し、彼女をひとりにしても心配ないと判断する。
「出てくる。お前と同じもの、買っておいてくれ」
返事は待たずに、人気の少ない場所に移動して、着信に応じた。
「瀬名だ」
無意識に声を潜めながら、ラーメンのカウンターに並ぶ彼女を目で追う。
『瀬名さん、朝峰です。休暇中に、すみません』
予想通りの相手に、見えないとわかっていて何度か頷く。
「構わん。なんだ」
『構わん、ですか。今日は、ペットのお散歩では?』
冷やかすような返事が耳に届き、ピクッと眉尻を上げる。