エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
――昨夜。
今日の休暇を、そう説明していた。
朝峰以外の部下は、『は?』とポカンとしていたが、彼だけは訳知り顔で、『ごゆっくり』とニヤニヤした。


『瀬名さんの子猫ちゃん、ご一緒ですか?』

「……目が届くところにいる。用件はなんだ」


溜め息混じりに答えると、わずかにくぐもった笑い声が聞こえた。
そして。


『例の男。割れました』


一瞬前とは一転して、キビキビとした報告に、俺は条件反射でハッと息をのんだ。


「……売買組織の人間か?」


騒がしいフードコートに背を向け、短く問う。


『はい。今、データ送信しました。確認してください』


返事を聞いて、スマホを耳から離し、指先で操作する。
モニターに映し出されたのは、不鮮明な画像だった。
しかし、大島が取引をしようとしていた、東京駅の写真だとわかる。
ご丁寧に、丸い円で示された人物が、確かに例の男と酷似している。
ゴクッと唾を飲んだのが伝わったのか、朝峰が『瀬名さん』と呼びかけてくる。


「ああ。確認した」


俺は、再びスマホを耳に当てた。
肩越しに、歩を捜す。
彼女は、カウンターでラーメンを受け取ったところだった。


作倉(さくら)義一(よしかず)、二十五歳。子猫ちゃんを尾け狙っていたのは、自分を見られたことを自覚しているため。恐らく、口封じが目的です』

「……だろうな」
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