エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
歩は驚いた顔で、男を見上げた。
もうひとりの男が彼女の腕を引くのを見て、一瞬目の前が真っ白になり、頭に血が上った。


「触るな」


ほんの数秒で辿り着き、歩の肩に置かれた男の手を掴んだ。


「っ、え?」


男がギョッとした様子で、振り返る。


「じゅ、純平さん!」


歩が俺に気付き、焦った顔で俺を呼んだ。
その腕に手をかけていた男も、弾かれたように手を放す。
しかし、それに構わず、


「俺の連れに、なんの用だ」


俺は、掴んだ腕を、男の背中でギリギリと捩じ上げた。
男は「ぐうっ」と呻き……。


「お、俺たちはただ、一緒に食事しようって、誘っただけで……!」


悲鳴のような声をあげた。


「……は?」


眉根を寄せる俺に、彼女もブンブンと首を縦に振る。


「本当です。それで、ちゃんとお断りする前に、純平さんが」


オドオドと説明され、気が抜けた。
腕の力がふっと緩んだ隙を逃さず、男たちは脱兎の如く逃げていった。
状況を把握しようと、俺はふたりの背を目で追った。


「ええと……ナンパ、っていうんでしょうか……?」


歩が困ったように……いや、控えめながら誇らしげに言うのを聞いて、俺の頭の中で、なにかの神経がブチッと音を立てて切れた。
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