エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
それから私は、簡易キットによる尿検査を受けた。
検査結果が出るのに時間はかからないそうで、それまで狭い部屋にひとり、ポツンと取り残された。
粗末なパイプ椅子に座って身を縮こめ、膝の上でカタカタと手を震わせる。


陽性なんて結果が出ないのは、私自身が一番よくわかっている。
でも、私をここに連れてきて、逮捕する気満々だった田込さんや新海さんの様子を思い出すと、結果を捻じ曲げられたりしないかと、恐怖で身が竦む。
不安を募らせながら、永遠かと思うほど長い二十分を過ごし――。


「結果が出たぞ」


そんな声と共に、部屋のドアが開いた。
私は弾かれたように立ち上がり、目の前に聳えるように立った〝瀬名さん〟を見上げる。
彼は顎を引いて私を見下ろし、


「陰性だ。釈放していいな?」


私に結果を告げてから、後からついて来た新海さんを振り返り、確認した。


「はい。承知いたしました」


新海さんは敬礼してから、頭を下げる。
その様子を目にした途端、私は脱力して、その場にへなへなとしゃがみ込んだ。
茫然自失している私を、瀬名さんが冷然と一瞥する。


「立て。帰っていいぞ」


帰りたいのはやまやまだけど、腰が抜けてしまって立ち上がれない。
なにも言わなくても、私の状況を察したのか、彼は忌々しげに顔を歪め、「はあ」と声に出して息を吐いた。
軽く背を屈めて、私の腕を掴む。
< 16 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop