エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「だから?」

「お前甘いもの好きだってわりに、歩が大量に買い込んだ菓子、お裾分けと言われても、ほとんど貰わなかったんだろ? その足で指紋採取に行くつもりでいて、荷物になるから……」

「違いますよ」


朝峰が、即座に言葉を挟んで否定した。


「あんなに買い込んだ理由を知ってて、貰えるわけないじゃないですか」

「理由? ……ああ、仕事の参考にってやつか」

「それも、違います」

「じゃあ、なんだ」


やや困ったように眉尻を下げられ、俺は首を捻った。


「瀬名さんは甘いものは好まないって、俺、教えてあげたんですよ」

「? ああ」

「でも菅野さん、『これだけたくさんあれば、ひとつくらい好みに合うものもあるかもしれない』って」

「え……」


彼の返答に意表を衝かれ、瞬きを繰り返す。


「あれは全部、彼女が瀬名さんのために選んだものです。そんな心のこもったものを、俺が幾つも貰っていいわけがないでしょう」

「俺の? ……!」


怪訝に繰り返し、最後は大きく息をのんだ。


「ひとつくらい、好みのものはありましたか?」


朝峰が、探るような口調で質問してくる。
俺は口元を手で覆って、彼から目線を外した。
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