エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
そんな動作で、朝峰は簡単に答えを見透かしたようだ。


「……そうですか。菅野さん、可哀想に」


歩を憐れむその言葉は、同時に、俺を痛烈に詰ってくれた。


「俺は……」

「え?」


無意識の呟きを拾われ、唇を結んで黙り込む。
俺は何故、昨夜、あんな……。


歩に対する下心を憚らない朝峰が、意味もなく不愉快だった。
嬉しそうに外出の報告をする彼女にも、神経を逆撫でされた。


朝峰が歩に勧めた菓子など、俺が貰うわけないだろう――。
あの苛立ちと怒りは、いったいなんだったのか。


『これからは、朝峰の家で保護してもらうか?』


尋常じゃなく荒ぶった感情に煽られて、言い捨てたひと言は、まるで嫉妬だ。
――嫉妬……?
俺が、なにに?


自ら導き出したその言葉に、俺の心臓がドクッと沸き立った。
至近距離にいようが、朝峰に伝わるわけがないのに。


「……意地悪したなら、早く帰って謝った方がいいですよ」


彼は俺の動揺をなんなく見抜き、鷹揚に腕組みをする。


「令状取り次第、身柄を拘束します。早ければ、未明には決着がつくでしょう」


淡々とした口調に引き摺られ、俺も冷静を取り戻す。
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