エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
***


GWは終わったばかりだけど、すぐに週末が訪れた。
また明日は休みだし、昨夜大量に撮ったスイーツの画像の整理をしていたら、いつの間にか日付が変わっていた。


目がしょぼしょぼして、スマホから顔を上げる。
テレビも点けずに、作業に没頭していた。
私ひとりきりのリビングは、しんと静まり返っている。
なんとなく壁時計を見上げ、「はあ」と声に出して溜め息をついた。


「……もう寝よう」


自分に言い聞かせるように呟き、テーブルに両手を突いて立ち上がる。
スマホを片手にソファから離れたところで、玄関のドアが開く音がした。


条件反射でドキッと胸が跳ねて、その場でピタリと足を止める。
廊下を走る足音が近付いてきて……。


「お、お帰りなさい。純平さん」


リビングのドアが開くと同時に、そう声をかけた。
純平さんはリビングにサッと目を走らせ、その視線を私の上で留める。


「お仕事お疲れ様でした」

「……ああ」


それだけ言うと、骨張った大きな手で口元を覆って、ふいと私から目を逸らしてしまった。
一日経っても、昨夜の気まずい空気を引き摺っている。
私の笑顔もぎこちなく、労いの後は言葉が続かない。
おかげで、私たちの間に、重苦しい沈黙がよぎる。
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