エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
思わず両手で頬を抑える私から身体を背け、純平さんは子猫を床に下ろした。
ピンと尻尾を立て、しなやかに歩くその横を追い越し、廊下を先に進んでしまう。


「あ」


慌ててその背を追った私を、リビングに入ったところで、身体ごと振り返り……。


「別に、もったいぶってるとか、意地悪したいとか、そういうつもりじゃない」


随分と不本意そうな顔で腕組みをして、見下ろした。


「だが、お前があんなこと言ったせいで、面と向かって呼ぶには、妙に力むんだよ」

「あんなこと、って」

「……エッチなことする時しか、って」


口元を覆い隠して続けた声は、聞き取りづらいくらいくぐもった。


「え……?」

「お前を抱く時、俺がどれほど夢中になっていたか……遠慮なく指摘されては、どうにもむず痒い」


半分やけっぱちみたいに、早口で言い捨てられる。
だけど、私の胸は手の施しようがないほど、きゅうんと疼いた。


「……へへっ」


彼が言うのと同じむず痒さを感じて、私ははにかんで笑った。


「なに笑っていやがる」


純平さんは、忌々しげに眉根を寄せたけれど、そんな反応すら愛おしい。


「でも」


私は彼の胸に抱きつき、そこから上目遣いに見つめた。
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