エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
務めて冷淡な目をして、会話を寸断する。
その場に立ち止まり、パチパチと瞬きを繰り返す朝峰を置いて、大きな歩幅で先を急いだ。


まあ、誤魔化したところで、従弟でもある彼に、歩との婚約を隠し通せはしないが……。
今、彼女とのことをこれ以上追及されたら、余計なことを言って墓穴を掘れる自信がある。
地味に浮き足立っている自覚があるから、自分でも手が付けられず困る。


――最初は、嗜虐心をくすぐるだけの存在だった。
時期が来たらすぐに手放す、性欲を満たすためだけに愛でる〝ペット〟。
そんな彼女に、俺が今まで抱いたことのない、嫉妬心や独占欲、庇護欲に執着心までも教えられた。
そのすべての感情、欲情をひっくるめて、歩への恋情だと認識したのは、彼女に危害が及ぶことを想像して荒れ狂った、まさにあの瞬間だった。
――そう思っていたが……。


「…………」


俺は無意識に顎を撫でた。
あの子猫を交番から預かった時、俺は無自覚のうちに、歩の代わりに愛玩できるなにかを欲していたのか。
子猫が自分の名前だと思い込むほど、彼女の名を呟いていたのか。
自分に向けて疑問を発するうちに、妙なくすぐったさに襲われる。


――と、その時。
上着のポケットの中で、スマホが振動した。


「……っ」


反射的にギクッとして、足を止める。
廊下の端に寄り、取り出したのはプライベートのものだ。
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