エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
モニターを見ると、歩からのLINEの着信だった。
軽く親指をスライドさせて、メッセージを確認する。


【純平さん、お疲れ様です。お夕食のご希望があれば、お時間ある時にお返事ください】


『お前の手料理が食べたいから、今日は早く帰る』と言ってきたから、張り切っているのだろう。
トーク画面をスクロールすると、一月ほど前に毎日のように届いた、夕食の献立を報告するメッセージが並んでいる。


一度は手放した彼女が、また俺のもとに戻ってきた。
何気ないメッセージに、改めて実感が湧いてくる。
俺は、ついつい目元を綻ばせて、


【鮎の塩焼き】


サッと指を走らせ、返信した。


歩はスマホを手にしているようで、俺の方からの吹き出しにすぐに既読表示がつく。


【ええっ。鮎の塩焼き? 冷蔵庫にないので、難しいかもしれません……。お仕事中なのに、お返事ありがとうございます!】


続いて、頭から汗を噴いて恐縮する、猫のスタンプが送られてきて……。


「仕事中」


メッセージの一単語を読み上げ、ハッと我に返った。
そうだった、仕事中。
なにを普通に返信しているんだ、俺は……。


そそくさとスマホをポケットに戻し、無駄に胸を張って廊下を歩き出す。
しかし――。


「……なにが、鮎の塩焼きだ」


自分への羞恥心で、独り言ちる口元を手で覆い隠した。
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