エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「え?」


ネクタイを解き、私を跨いで膝立ちになる。
下から見上げると、切れ長の目元に影ができる。
なにか憂いを帯びたダークな雰囲気が壮絶にセクシーで、私の背筋を寒気にも似た戦慄がゾワッと貫いた。


「か、限りなく近付けるって」


私が反芻すると、瀬名さんはニヤリと口角を上げる。
警察官僚なのに、なにか企んでいそうな悪い微笑み。
奇妙な背徳感が匂い立ち、私の心臓は大きく跳ね上がった。


「手っ取り早くて、いい方法がある」


瀬名さんが、自分のシャツのボタンを、上からひとつずつ外し始める。
この状況で服を脱ぐ……彼が言う『いい方法』に、さすがに私もピンと来た。


「ちょっ、待ってください、瀬名さんっ」


突如激しくなる動悸に慌てて、彼の腕に手をかけた。


「ただの偽装で、そこまでする必要は……!」

「話が地味に噛み合わないな。それを、本物に近付けるためにするんだろう」


瀬名さんは、呆れを通り越して蔑むような目で私を見下ろし、溜め息をつく。
そして。


「いいから、手を放せ」


言うが早いか、私の手を振り解き、勢いよくシャツを脱ぎ捨てた。
大人の男性の引き締まった裸の胸。
その美しさと迫力に、心臓が壊れそうなくらい強く速く拍動する。
ドキドキするのに、つい見惚れてしまったほんのわずかな間が、確かな隙に繋がったようだ。
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