エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「気、失ったか」


独り言ちて、ベッドに突いた腕を支えに、身体を起こす。
ぐったりと弛緩した彼女の横に、足を伸ばして座った。


サイドテーブルの時計を見ると、日付が変わっていた。
久しぶりに女を抱く愉楽に理性が吹っ飛び、何時間も腰を振り続けるとは――。


「……俺らしくもない」


微かな溜め息と共に、額に当てた手の隙間から彼女を見下ろす。
彼女の頬に張りつく髪を摘まみ上げ、悪戯に指先から零した。


――菅野歩。
二十七だったか。
今年三十四になる俺とは、六歳違いで正しいだろう。


ずっと地方の地元暮らしのせいか、都会の女と違い、擦れたところがない。
自らSのバイヤーに接触したのは偶然にしても、初対面の人間からホイホイ物をもらい、俺の部下に常習犯と間違われるとは、人を疑うことを知らなすぎる。


組織の構成員と思しき男に目をつけられるのも、自業自得だ。
そう、俺の事件じゃなければどうなろうと知ったことじゃないし、当然放っておいただろう。


よく言えば純粋。
率直に言えば、世間知らずの大バカ。
だから、人の話を聞かずに〝偽装結婚〟などと早とちりした。
警察官僚を〝犯罪〟に加担させる罪悪感と、健気な〝妻〟の献身で、俺に大事な処女を散らされる羽目になった――。


「…………」


彼女をジッと見つめてから、形のいい頭を手の平で包み込み、ぐりぐり撫でた。
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