エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
俺は、生粋の警察官僚だ。
警察の職に就く者なら、〝瀬名〟という名を聞くだけで竦み上がる。
ヒエラルキーの頂点、警察庁長官、警視総監を多数輩出してきた、瀬名一族本家の次男。
日本警察界のサラブレッド……それが、俺だ。


とは言え、国家公務員に家柄や縁者の七光りは通用しない。
年間数人しか採用されないキャリア組でも成績トップで入庁を果たし、警視正への昇任も警察史上最速の俺にとって、一族の名前など鬱陶しい足枷でしかない。


すべて実力だと示すために馴れ合いを避け、自分にも他人にも厳しく職務に当たった。
当然、犯罪者には冷酷無慈悲で容赦しない。
部下に〝悪魔〟と恐れられ、〝ドS〟と陰口を叩かれることこそ、俺にとって最高の賛辞。
そんな俺の嗜虐心を、彼女は存分に刺激した――。


夫婦を装うだけで、本当に籍を入れるわけじゃないんだから、偽装結婚でもないし、むろん犯罪になるわけがない。
しかし、彼女の間違いを正してやる気はさらさらない。


「女は面倒だが、お前なら暇潰し程度にはなりそうだ」


決して褒められたものではない黒い高揚感に、口元をニヤリと歪ませる。
再びベッドに寝そべり、彼女のうっすらと汗が浮かぶ額にキスをした。


「クセになるほど愛でてやる。……歩」


くっくっと含み笑いして、華奢で小柄な身体を、すっぽりと胸に収めるように抱きかかえる。
彼女の柔らかい髪に顔を埋め、目を瞑った。
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