エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「開発しがいがありそうだ。新雪を土足で踏み荒らすような、爽快感が堪らない」

「っ……」


黒さを憚らない、いたぶるような言い方に、足の爪先までビリビリ痺れる。
涙目になって恥じらう私に、彼は満足げにほくそ笑み、ふとサイドテーブルに視線を流した。


「おっと」


短く声を漏らし、ベッドを軋ませて上体を起こす。
私に背を向け、床に降り立った。


ようやく、胸から手を離してもらえた……。
ドギマギしながら、床からシャツを拾い上げる彼の背中を目で追う。


瀬名さんは、シャツにサッと腕を通し、私を肩越しに振り返った。
そして、なにか思いついたように背を屈め……。


「っ!」


ちゅっと音を鳴らして、私の唇にキスをした。

「なっ、どっ……」

「新婚夫婦らしいだろ?」


真っ赤に顔を火照らせて、両手で唇を覆う私をふんと鼻で笑い、


「仕事に行ってくる」

「えっ……お、お仕事……?」

「警察に、土曜も日曜もない」


条件反射で呟いた私の思考回路を先回りして、そう返してくる。


「お前は、俺の後でシャワー浴びろ」

「っ、はいっ……」

「いいか? 絶対、ふらふら出歩くな。ここで生活する意味がなくなるからな」

「は……」


瀬名さんは、ドア口に向かって大股で歩いていき、私の反応を待たずに、寝室から出ていってしまった。
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