エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
純平さんと偽装の新婚生活。
これからも、昨夜みたいなこと、何度もするんだろうか――。


昨夜のめくるめく出来事が嫌でも蘇ってきて、暑くもないのに顔が火照る。
私は手をヒラヒラさせて、頬に無意味な風を送りながら、ソファに移動した。
メゾネットルームという構造上、天井が高く、広すぎるリビングはどこかガランとしている。


純平さんが帰ってくるまで、ここで独りぼっち……。
急に心細くなって、ソファの端っこに腰を下ろし、お腹の底から深い息を吐いた。


上京してたった一週間で、私の身に起きたことすべてが、まるでドラマみたい。
息もつけない早い展開に、思考回路がついていかない。


だけどこれも、純平さんが私の身の安全を考えてくれてのこと。
私は彼の迷惑にならないよう、精一杯〝妻〟を装わなければ……!
決意を新たに、片手で握り拳を作って自分を鼓舞した。
でも、すぐに、


「……妻って、なにをすればいい?」


根本的な疑問が湧いてくる。
母や、お嫁にいった姉というお手本がいるから、恋人よりは妻の方がイメージしやすい。


でも、私の母は専業主婦で、私は日中仕事がある。
母のように、完璧に家事をこなせる自信はない。
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