エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
一昨日の夜――。


『明日は俺も休めるから、車出してやる』


純平さんはそう言って、昨日、私が希望した〝ご褒美〟を叶えてくれた。
衣類を取りに、自分のマンションに帰るつもりだったのに、彼がハンドルを握った黒いベンツが向かったのは、何故か銀座の高級デパート。


『買ってやるから、その貧相で地味なスーツをどうにかしろ』


心底呆れ果てた顔で、私が普段買う洋服の値段より一桁、下手したら二桁多いショップを、何軒も回った。
まず値札を見て怯んでしまい、自分で選べずにいると、彼は自ら服を手に取り、私の頭のてっぺんから爪先まで視線を走らせ、店員さんにサイズを告げた。
試着室に押し込められ、着替えている間にも次々と服が追加される。
気分はほとんど着せ替え人形……。


純平さんは、その中で自分が厳選したものを、店員さんに包ませた。
値段を確認せず、クレジットカード一括払いで豪快に支払う彼に戦々恐々として、最初の一店で、『もう十分です』と断ろうとしたのに。


『仮初めでも俺の妻を名乗らせる女が、そのなりでは困る。妻ってなにをすればいい、と言ったな。コンシェルジュにも顔を覚えられたことだし、俺に恥をかかせるな。お前がすべきは、まずそこだ』
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