エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
仕事で覚えることは、山ほどある。
その上、仕事の速い同僚に置いていかれないようにするのが精一杯で、オフィスではまだまだてんてこまいだ。
だけど、仕事の合間や休憩中に桃子と話せるのが、いい気分転換になる。


東京生活二週目。職場の環境には、だいぶ慣れてきたと思う。
仕事のペースが身体に染みついて馴染んでいければ、同僚たちにも追いつけるはず。
焦らず、着実に。そうやって、仕事の自信に繋げてきた。


その週の金曜日、私は仕事を終えて、オフィスビルから迎えの車に乗った。
毎日送迎してもらううちに、運転手の袴田さんとは砕けた会話をするようになっていた。


「菅野さんって、本当のところ、純平坊っちゃんのコレじゃないですか?」


左手の小指を立て、バックミラーミラー越しにニヤニヤと探ってくる。
いつも黒いスーツに白手袋。
とても品がいいのに、こういうところは、ちょっといやらしいお祖父ちゃんみたいだ。
純平さんが、ご家族には偽装結婚のことを話していないから、ここは私も苦笑いで流す。
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