エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
なのに、純平さんがお休みであるよう願ってしまうのは、彼と過ごした先週末が、刺激的で楽しかったせいもあるだろう。


私に対する彼の言動は、九割が氷の鞭だけど、残りの一割はドロドロに溶けそうなほど甘い。
初めてのキス、強引な抱擁――。


あんな形で初めてを奪われ、憤ってもいいはずなのに、身体を貫いた言いようのない痛みまでも、思い出すときゅんと胸が疼く。
これをときめきと言っていいのかどうか、判断できない。
でも、どうしようもなくドキドキする。


力任せに植えつけられて知った蜜の甘さは、半端じゃない。
抜けられない中毒性に、私はズブズブ嵌まって、もっともっとと欲張りになる――。


「っ……」


純平さんの大きな骨ばった手を脳裏に描いただけで、鼓動が沸き立つ自分に戸惑い、私は急いでスマホをコートのポケットに突っ込んだ。
あたふたとバッグを持って、メゾネットフロアへの階段を駆け上る。
自室として使わせてもらっている客間に戻り、ルームウェアに着替え……。


「明日の夕食は、なに作ろうかな」


きっと、今夜も食べてもらえないであろう夕食はそっちのけで、純平さんと一緒に食べられるかもわからない、明日の夕食の献立ばかり考えた。
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