身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「私が欲しかったのは、自由ではありません」

始まりは歪な関係だった。支配的だったとも言える。

だが、仁のさりげない優しさに気づき、今や椿は自らの意思で彼の妻になりたいと願っている。

甘く抱かれ、のぼせあがっていたのかもしれない。もしかしたら本当に愛してくれているのではないかと期待した。

憧れの人と、憧れではなく現実に一緒になれる未来が見えた、なのに――。

「私は……仁さんの妻になりたかっ……」

嗚咽とともに掠れた声を絞り出すと、仁は声を詰まらせた。困惑し、言い訳のようにまくし立てる。

「椿は愛情と意地を混同している。君が週刊誌の記事にショックを受けたと言うのなら、それはプライドが傷ついたからだ。俺が浮気をしていると知り、女性としての尊厳を踏みにじられたと感じたのだろう」

「尊厳なんて、そんな高尚なものじゃないの!」

知ったような顔で椿の心を推理していく仁が憎らしく感じた。

仁はなにも理解していない。椿の心のうちなど、これっぽっちもわかってくれていないのだから。

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