身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「これではっきりしたわ」

菖蒲は満足したのか落ち着きを取り戻し、母が煎れた緑茶を口に運んだ。

「私が京蕗家に嫁ぐわ。そしてみなせ屋を継ぐ」

誰もが口を閉ざし、居間に緊張が走る。

菖蒲は椿に向き直ると、にっこりと微笑んで両肩に手を載せた。

「椿。今までよく慣れないことを頑張ったわね。後はお姉ちゃんに任せて、好きなことをなさい」

優しい声をかけられて、ぐらりと心が揺れる。

だが、椿の中にも譲りたくないものはある。たとえ菖蒲が自分よりも優れていたとしても、大切なものをすべて差し出せるかと言われれば答えはノーだ。

なにより、すでに椿のお腹の中には仁が授けてくれた子どもがいる。

「あの、お姉ちゃん……」

笑顔なのにどこか空恐ろしい菖蒲を見上げ、椿はおずおずと切り出す。

「私、京蕗さんと結婚したいって、思っているの……」

「は?」

菖蒲の笑顔が凍り付き、椿は自然と震えが湧きあがってきた。

自分のひと言が菖蒲の怒りを激しく掻き立ててしまったことを直感する。

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