身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
椿がまだ学生の頃は、菖蒲が遅くまで店にいて、その間に母と椿で調理することが多かった。真逆の状況に少し不思議な感じがする。

菖蒲は料理など嫌いだと公言していたし、進んで台所に立つことはないと思っていたから余計だ。

「椿。お務めご苦労様。座っていて」

「ありがとう、お姉ちゃん……なんか意外」

「今日は私の方が暇だったんだもの、家事をするのは当然でしょ」

そういうところは真面目で常識的な菖蒲だ。加えて、器用で何事もそつなくこなしてしまう。

料理も嫌いとは言うもののできないわけではない。何度も練習してやっと綺麗な形の卵焼きを作れるようになった椿とは違って、一発で要領よく仕上げてしまうのが菖蒲だ。

「でも、やっぱり料理は好きじゃない。お店に立っている方が性に合っているわ」

そう苦笑してキッチンに戻っていく。

それでも、できないからやらないのと、できるけれどやらないのは大きな違いがある。すべてこなせた上で、やるやらないの選択権を行使できる菖蒲はすごいと思う。

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